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読みもの›シーシャの立ち上げ方:低火力・中火力・高火力の使い分け

シーシャの立ち上げ方:低火力・中火力・高火力の使い分け

最終更新 2026.08.24 ・ KEMURI NOTE 編集部

立ち上げの火力は、炭をいくつ・どこに・どう置くかと、風防、吸い方で決まります。どれも少しずつ効くので、強さは切れ目なく変わります。

とはいえ、そのままでは記録もできないし、人にも伝わりません。だから KEMURI NOTE は、投稿画面で温度を低温/中温/高温の3つにしています。この記事も記録と揃えて、3つで話を進めます。

先に、やることだけ

  1. 炭を置く ── 置き方はボウルや炭、好みに合わせて調整
  2. 蒸らす ── 香りが広がってきて、ボウルの底も温かくなるまで
  3. 吸ってみる ── ボトルに煙がたまるか。最初が薄いのは正常
  4. 足りなければ調整する ── もう少し蒸らす、炭を動かす、足す

薄いのはあとから足せますが、焦がした葉は戻りません。

そのうえで、始め方については「炭を多めに置いて立ち上げ、立ち上がったら1つ減らす」と書いている解説と、「炭を少なめで始めて、足りなければ足す」と書いている解説があります。どちらも専門店が書いていて、はっきり逆のことを言っています。どちらかが間違っているのではなく、決め手が別のところにあるからです。

この記事は、炭を置いてから立ち上がるまでだけを扱います。炭をおこすところは炭のおこし方、立ち上がったあと一台を最後まで持たせるところは熱管理にあります。

はじめに手順をひととおり通してから、その手順のどこを何で動かしているのかを見ていきます。

まず、立ち上げは3段階ある

「立ち上げ」という言葉は、実際には3つの作業をまとめて指しています。今回見た国内の解説は、どれも「蒸らし → 吸い出し → 調整」と分けて書いていました。なお、この吸い出しを「吸い上げ」と呼ぶ解説もあります。

  1. ① 蒸らし ── そのまま待つ

    待つ長さは、ボウル、詰め方、炭の種類と数、室温や風で変わります。アルミを張って炭を直接のせる「直炭」より、炭を中に入れて使うヒートマネジメント(HMS)のほうが長くかかります。時計ではなく、下の合図で見ます。

    合図: 香りがボウルの周りに広がってくる。ボウルの底もさわって温かい

  2. ② 吸い出し ── 吸って確かめる

    ASLAJ の解説は「ボトルを見ながらそっと吸い、ボトル内に煙が充満すれば立ち上げOKの合図」としています。吸い出しは確認であると同時に、熱を入れる操作でもあります。1回で終わらせず、蒸らしと往復します。

    合図: ボトルに煙がたまり、吐いた煙が立つ

  3. ③ 調整 ── 足りない/行き過ぎを直す

    薄ければ炭を中央寄りに動かす・足す。強すぎれば炭を1つ減らす・外周へ逃がす。風防を使っているなら、そこで外す。直したら、そのまま吸い直すか、蒸らしてから吸い直します。

    合図: 効き目は次の吸い出しに出る

最初の煙が薄いのは、失敗ではありません。海外の専門店の解説も「一台の最初の薄い煙は正常で、何かがおかしい兆候ではない」とはっきり書いています。薄いからと炭を足すと、今度は火力が上がりすぎて、焦がす側に振れます。

3段階は一方通行ではない ── 吸い出しと蒸らしは往復する

並べて書くと1本道に見えますが、実際の立ち上げは吸い出してみて、足りなければ蒸らしに戻るの繰り返しです。個人の作り方をまとめた記事は「2、3吸いして煙が出なければもう少し蒸らしましょう」と書いていますし、荻窪の店主が監修した手順も、3分蒸らす → 3〜5回大きく吸う → 炭を動かす → また待つ、という並びになっています。どの手順も、吸い出しを1回で終わる形では書いていません。

吸い出しで、吸ってみて…味が乗っている立ち上げ終わり薄い・味が出ない熱を足す蒸らす、炭を中央へ吸い出しへきつい・焦げくさい熱を減らす炭を外周へ、風防を外す吸い出しへ
味が乗るまで、熱を足したり減らしたりして、吸い出しに戻る

吸い出しながら、炭を動かす

往復のあいだに炭を動かすところまでを立ち上げに含めている解説が複数あります。荻窪の店主が監修した記事は、HMS を「45°くらい回転させて、炭が接していなかった部分に炭を持ってくる」とし、 ASLAJ は「1回吸ったら蓋をして炭をまだ置いていない場所に炭を動かして、また蓋を閉めて1吸い」を、炭がボウルを1周するまで繰り返す、と書いています。

そのまま待つだけだと、特に強く熱が入るのは炭の真下です。吸い出しの往復のあいだに1周させておけば、最初の1口が出る時点で、ボウルの全周にひととおり熱が当たった状態になります。後半の炭の位置替え(熱管理)と同じことを、立ち上げの中で先にやっているわけです。

では、どこで完成にするのか

往復のどこかで、ここで完成、と決めることになります。その見極めだけは、この記事では扱いません。何を見て決めるか(見るところは5つあります)、なぜ合図がどれも「快適より少し上」を指しているのか、そして完成にすると同時に火力を落とすところまでが一続きだという話は、吸い出しはどこで完成にするかにまとめてあります。

「0蒸らし」── 蒸らしをしない立ち上げ

往復の極端な端に、蒸らしをせず、最初から吸って立ち上げるやり方があります。作る人のあいだで「0蒸らし」と呼ばれています。

先に断っておくと、手順を書いた解説が見つかりませんでした

やり方として実際に呼び名が付いているいっぽうで、今回調べた範囲では、その狙いや手順を説明した記事を見つけられませんでした。一般向けの解説はいずれも蒸らしをする前提で書かれていて、理由は「すぐ吸うと煙が出ない」「フレーバーの表面だけが温められて焦げた煙になる」で共通しています。以下は仕組みから言えることだけです。やっている人がそう考えている、という話ではありません。

ここで、葉に熱が入る道が3つあることを先に押さえておきます。炭から離れていても届く分(放射)、触れているところから伝わる分(伝導)、そして吸ったときに空気が動いて運ばれる分(対流)の3つです(熱の3経路)。この記事で対流と呼ぶのは、この吸って空気を通したぶんです。

蒸らしのあいだは、まだ吸っていません。つまり葉に熱を入れているのは主に伝導です(アルミを張った直炭では、放射は葉までほとんど届きません)。吸い出すと、そこに吸って空気を通したぶんが加わります。

0蒸らしは、この待ち時間をなくすやり方です。待っているあいだ、炭の真下の葉は上から焼かれ続けます。その時間が無いので、焦げの出どころがひとつ減ります。かわりに、熱がどれだけ入るかは吸い方でほぼ決まります。

もうひとつ、出てきた香りがどこへ行くかという見方もできます。ロータス型のヒートマネジメントの手順を書いた記事は、立ち上げの合図に「5分程度待つと周囲にフレーバーの香りが広がってくる」を挙げていました。裏を返せば、蒸らしのあいだに出た香りは部屋に広がっていて、ホースを通って吸う人まで来てはいないということです。

同じことを示す例が、もうひとつあります。シリコンボウルごと電子レンジで温めて蒸らしを短縮できないか試した実験記事(2015年)は、時間は大幅に短縮できたものの「加熱の際に香りが飛んでしまい、ピーク時の香りが薄くなり持ちも悪くなる」として実用的ではないと結論しています。ピーク時の濃さと持ちが3/4〜2/3になった、とも書かれています。 電子レンジでの話ではありますが、吸わずに温めるだけでも香りは飛ぶ、という例です。

ただし、電子レンジと蒸らしでは条件がまるで違います。「だから蒸らし中も同じだけ香りが失われている」と言い切れる材料はありません。ここから先は推測ですと断ったうえで言えば、 0蒸らしを「最初のいちばん濃いところを、逃がさずに吸う」やり方として見る、という仮説は立てられます。そう見たときに引き換えになるのは、熱が入っていない最初の数口の薄さと、熱を入れるのを全部吸い出しでやる難しさです。

ここまで

立ち上げの手順は、これでひととおりです。

蒸らして、吸って確かめて、足りなければ戻る。うまくいかないときだけ、炭を動かすか、風防をかぶせるか外す。

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この先は、その手順のどこを何で動かすかです。フレーバーによって要る熱がどう違うか、その実例もここで出てきます。

立ち上げで動かせるつまみは4つ

立ち上げのやり方が人によって違って見えるのは、動かしているつまみが違うからです。以下の4つはこの記事の整理で、そう呼ばれている分類があるわけではありません。ただ、熱の3経路に対応させると、主にどこへ効くのかが並びます。

① 炭の量

何個置くか。いちばん粗くて、いちばん効くつまみ。ただし低火力・中火力・高火力は炭の個数の名前ではありません。①から④までを全部足して、ボウルにどれだけ熱を入れているかを大まかに言ったものです。

② 距離と接地面

同じ個数のまま、どこに置くか・どう置くか。縁から外へはみ出させる、フチに乗せる、中央寄りに数mm動かす、フラット炭を平置きか立て置きか。

③ こもらせるか、逃がすか

風防をかぶせる、HMSなら蓋や通気窓を閉じる。まわりへ逃げる熱(熱損失)が減って、ボウルの周りの温度が上がりやすくなります。アルミの穴も同じで、蒸らしのあいだは開けずにおいて、吸い出しに入るときに開ける、というやり方もあります。こもらせるのは立ち上げのあいだだけで、終わったら風防は外し、蓋は開けます。

④ 吸うか、蒸らして待つか

蒸らしで待つあいだは、まだ空気を通していません。吸い出しを始めた瞬間から対流が加わり、しかも吸う強さでその量が変わる。手を伸ばさずに動かせる、いちばん細かいつまみです。

4つのつまみが主にどこへ効くか。炭の量と、距離と接地面は伝導。こもらせる/逃がすは熱の伝わり方ではなく、まわりへ逃げる熱(熱損失)。吸うか蒸らして待つかは対流
 伝導対流熱損失
① 炭の量主に効く印なし印なし
② 距離と接地面主に効く印なし印なし
③ こもらせる/逃がす印なし印なし主に効く
④ 吸うか、蒸らして待つか印なし主に効く印なし

伝導=触れて伝わる/対流=吸うと起きる/熱損失=まわりへ逃げる熱

①と②は伝導。対流にいちばん効くのは④

丸はいちばん効くところで、そこしか動かさないという意味ではありません。④はとくにそうで、吸うと炭にも空気が当たって炭そのものが熱くなるので、伝導も上がります。そこはあとの「急いで吸うと何が起きるのか」で扱います。

4つに入れなかったものが1つあります。アルミの枚数と厚さです。これも立ち上がりを変えますが、張ってしまうと、張り替えない限り動かせません。穴のほうは、③と④の両方にかかります。開ければ逃がし、開けなければこもる(③)。そして吸うときに空気が通る道でもあります(④)。

中身は熱管理にあります。厚いほど・枚数が多いほど、熱はゆっくり伝わる。1枚はさむだけでも立ち上がりは数分遅くなる。穴は「開けた穴は減らせないので、吸ってみて重ければ足す」が鉄則、と書かれています。

つまみ① 炭の量 ── 火力は低・中・高の3段で考える

低火力で立ち上げる

炭を減らす、縁からはみ出させて葉から遠ざける、風防を外しておく。ゆっくり温度が上がるので、上面だけが先に焼ける事故が起きにくい。

使う場面: 熱に弱いとされるフレーバー/初めて吸うフレーバー

注意点: 火力と一緒に時間まで縮めると、ただの生焼けになる。温度が上がるまでの時間を長めに取る

中火力で立ち上げる

炭を外周へ等間隔に置く。近づけず、遠ざけず、こもらせもしない。ここが基準で、低火力と高火力はここから寄せた形です。

使う場面: 前に吸ったことがあるフレーバー

注意点: 個数は目安。ボウルの大きさ、炭の形とサイズ、直炭かHMSかで動く

高火力で立ち上げる

多めに置く、中央寄りに詰める、風防をかぶせる。ボウルやHMSにも早く熱が乗るので、分厚いボウルやHMSでは現実的な選択になります。

使う場面: 熱がたくさん要り、熱にも強いフレーバー/分厚いボウルやHMS/風が当たる・寒いなど熱が逃げるとき

注意点: 行き過ぎると戻せない。トングと炭の置き場所を手元に用意してから始める

傾向としては、ブロンドは低温〜中温、ダークは中温〜高温。ただしリーフタイプで決まるわけではありません(後ろで、ダークなのに熱に弱い例が出ます)。どちらの葉でも使えるのが中温帯です。フレーバーごとにどのあたりが向くかはフレーバーの温度帯にまとめました。

割れているのは、最初に置く炭の数

狙いはどの解説も中温帯で、違うのはそこへ炭を減らして近づくか、足して近づくかでした。今回確認した範囲では、国内の解説は多めで立ち上げる側で書かれていました。 drshisha はシリコン製のボウルで「炭3つ→7分放置→1つ減らす」、陶器のボウルで「炭3つ→5分放置」。ASLAJ も炭3つで蓋をして5分、吸いにくければ1つ減らす、と書いています。フラット炭を平置き3つで立ち上げ、調整で平置き2つ+立て置き1つに落とす、という書き方も同じ形です。

いっぽう、確認できた海外の専門店の解説はどちらも少なめから足す側でした。 hookah.org は「炭は少なめに始めて、必要なら足すのが常に良い」と書き、 Shisha Superstore は標準的なボウルなら2個を外周に置くところから始める、多めに置いて後から減らすのではなく、と説明しています。

ただし、どちらの側も置いているのは2〜3個です。渋谷の店が書いた記事も「炭は2〜3個を均等に配置するのが基本」としたうえで、「炭を多く置きすぎると一気に熱が入りすぎ、フレーバーが焦げる原因になります」と書いています。国内の「多め」は基本の上の端のことで、置きすぎとは別の話です。

炭を多めで立ち上げて、1つ減らす今回見た国内の3本はこちら低温中温高温炭を少なめで始めて、足りなければ足す海外の2本はこちら
狙いはどちらも中温帯。割れているのは炭を減らすか、足すか

「減らす」は、立ち上げ用の火力から下ろす動き

並べ直すと、確認した国内の3本は立ち上げの火力と、そのあと吸い続ける火力を別のものとして扱っています。3つで立ち上げて2つにするのは、火力の決め方を間違えたから戻しているのではなく、立ち上げ用の火力から、吸う火力へ下ろしているということです。

だからこの「2つにする」は、立ち上げの途中で直しているのではありません。立ち上がったところ、つまり吸う人に渡す直前でやる操作です。強すぎたときに途中で1つ減らすのとは、やることが同じでも理由が別になります。この節で数えている炭の数は、置きはじめの数のほうです。

トータルフーズシステムの解説は、その理由まで書いています。平置き2つ+立て置き1つに変えるのは「吸っている時に温度が下がってくるから、ちょうど良い感じになる」から。火力を落としたところが、これから吸う人にとっての適温になる、という組み立てです。この引き渡しは吸い出しはどこで完成にするかにまとめてあります。

いっぽう海外の2本は、最初から吸う火力で始める書き方でした。足りなければ炭を足す。つまり割れているのは、立ち上げ用の火力を、吸う火力とは別に持つかどうかです。

なお、覚えるなら個数ではなく動きのほうです。適正な数は炭の形・サイズ・ボウル・HMSで動くので、「立ち上げの火力のまま吸い始めない」だけが持ち帰る形になります。

 多めで立ち上げる少なめで立ち上げる
そう書いている例drshisha・ASLAJ(炭3つ→5〜7分→1つ減らす)hookah.org・Shisha Superstore(2個から始める)
速さ早い。ボウルやHMSにも早く熱が乗る遅い。分厚いボウルやHMSでは乗りにくい
失敗の出方上面から焦げる(戻らない)生焼け・薄いまま(戻せる)
向く葉熱がたくさん要り、熱にも強いフレーバー(通しきらないと生焼けになる)熱に弱く、上面が先に焼けてしまうフレーバー
前提になる備え炭をすぐ落とす・外す手段があること追加の炭に火が入っていること

割れている理由は「戻せるかどうか」

2つの失敗は、性質がまるで違います。熱が足りない失敗は、あとから直せます。炭を足す、中央へ寄せる、風防をかぶせる。数分で取り返せる。ところが焦がしてしまった葉は元に戻りません。上面を焼いてしまえば、そのあと何をしても焦げ味が乗り続けます。

だから「少なめから始めて足す」は、取り返しのつくほうを選ぶという考え方です。熱管理の記事が鉄則として書いているのもこちらです。慣れていないうちは、こちらのほうが安全です。「多めで立ち上げて減らす」が成立するのは、減らす手段がすぐ手元にあるとき——トングがあり、炭を落とせる場所があり、味を見て判断できるとき、という条件付きです。

炭の数で刻めないときは、炭のほうを割る

小さいボウルだと、1個の増減が大きすぎて中間が作れないことがあります。そのときに使えるのが、炭のサイズと分割です。チルインの解説は「大きな炭は小さく割って、焼けムラを防ぐため3〜4箇所に置く」と書いていて、六角形のヘキサ炭は半分に割って使えると紹介されています。同じ熱量を細かく分けて置けば、置き場所も増えて偏りにくくなります。

そして、葉のほうが答えを決めていることがある

いちばん大きい決め手は、葉のほうです。高火力が要る葉に低火力で立ち上げると、焦げないかわりに生焼けになります。

大きめのキューブ炭を3〜4つ置いて作る理由について、六本木の店主が書いた解説はこう説明しています。「高火力で吸いたいからこうしているわけではありません。ロシアのタバコが高火力を必要としているからこうしているだけです」。そして「中東系やTangiersなどの熱に弱いタバコでシーシャを作るときのように高めの密度でボウルに詰めて低温でじんわりと温めていると生焼け感を感じるはずです」と続きます。生焼けになるかどうかを決めているのは、フレーバーが要る熱の多さのほうです。熱にどこまで耐えるか(熱耐性)とは別の性質です。熱がたくさん要るうえに熱耐性も高いフレーバーなら、多めに置いても崩れにくい。引用した解説は DARKSIDE の作り方の記事で、DARKSIDE を熱耐性が強いとも書いています。

「ダークだから高火力」ではない

この引用で熱に弱い側の例に挙がっている Tangiers は、ダークリーフです。つまり境界はブロンド/ダークの線とは一致しません。分けているのはフレーバーごとの要る熱と熱耐性であって、リーフタイプではない。要る熱と熱耐性の違いと、リーフタイプごとの傾向はフレーバーの温度帯に書いていますが、フレーバー単位で例外が出ます。

参考例 ── フレーバーで見るとこうなる

立ち上げの基本はここまでで、この先は参考例です。複数の解説で書いていることが一致したところだけ挙げ、割れているところは、割れていると書きます。1本しか見つからなかったことは、今回ここには書いていません。火力の相性は同じブランドの中でもフレーバーごとに違うので、系統やブランドで丸ごとは決められません。

Al Fakher バニラ ── 低め。ただし蒸らしは長め

CLOUD のレビューは「適切な火力の幅が比較的狭く、火力が強くなると喉を刺激するような強さが出てくるので、火力の管理には注意する必要があります」とし、同時に「基本的に AlFakher のフレーバーはしっかり蒸らすことが重要です」と書いています。シーシャラゴスも「スイーツ系は他のフレーバーと比べると熱耐性が弱いものが多い。Al Fakher のバニラもその点は同様」「一気に温度を上げると、イガりが出たり、フレーバーの味が飛んだりする可能性があります」「じっくり熱を入れていく必要があり」としています。

ポイント: 火力は下げるのに、時間は下げない

Al Fakher ミント ── 低温は青さ。上げるほど清涼感が前に出る

マルキヤシーシャブログは温度帯ごとに分けて、低温では「清涼感はまだ本格的に立ち上がりません。主に感じられるのは、青さや草のようなニュアンスです」、中温では「香りと冷感成分の揮発量が安定し、鼻・口・喉のそれぞれで違和感なく広がる」、高温では「清涼感が鋭い刺激へと変化します」「鼻の奥がツンとする、喉にピリッとした感覚が残る」としています。シーシャラゴスも「温度を上げることで強い清涼感を出すこともでき、温度変化による味の違いがわかりやすいフレーバーでもあります」と書いていて、向きは同じです。

ポイント: これは総量でも速さでもなく、どの温度で吸うかの話。同じフレーバーでも、狙う味で選べます

Tangiers ── 総量は解説が割れている。ゆっくり、だけが同じ

Hookah Vault は「Tangiers は他のブランドより多くの熱を必要とする」と書き、炭3個から始めて数分後に4個目を足すこともある、炭が葉を温めるのを辛抱強く待つように、と続けます。いっぽう Kakas Hookahs は「Tangiers はかなり熱に敏感なことがある」としてアルミを二重にして緩衝材にすることを勧め、炭は2個から、「熱はゆっくり始めて、時間をかけて温まらせたい。炭を多く一気に当てると、ボウルを焼いて、吸い始める前に一台を終わらせてしまう」と書いています。Olla Bowls も「低温のタバコで、熱を入れすぎると強く出る」として、フラット炭を薄い側を上にして熱を減らし、炭を置いてから3〜5分待つ、と書いています。

ポイント: 総量は割れています。3本が同じことを書いているのは「ゆっくり立ち上げる」のほうだけです

DARKSIDE ── 通しきらないと生焼け

前の節で引いたとおり、25〜26mm のキューブ炭を3〜4個置くのは「ロシアのタバコが高火力を必要としているから」で、要る熱が多いぶん乗せきれないと生焼けになるという説明でした。 CLOUD に載っている調理の技術論も、炭の置き方について「炭同士の距離を若干開けてあげること」とし、立ち上げは「ボウルを触って温まり具合を確認し」と書いています。

ポイント: 熱の総量は上げるが、炭は離す。量のつまみと距離のつまみを別々に動かしている例です

バニラ・Tangiers・DARKSIDE の3つに共通しているのは、「熱の総量」と「立ち上げの速さ」を別々に扱っていることです。総量のほうは、少なくていいものも、要るものも、書き手どうしで割れているものもあります。それでも「ゆっくり立ち上げる」は3つとも同じでした。「強くする/弱くする」の1本のつまみだと思っていると、この使い分けは出てきません。

3つのフレーバーの、熱の総量と立ち上げの速さ。総量は少ない・割れている・多いとばらけるが、立ち上げの速さは3つともゆっくりで同じになる
 熱の総量立ち上げの速さ
Al Fakher バニラ少ないゆっくり
Tangiers解説が割れているゆっくり
DARKSIDE多いゆっくり
熱の総量はばらけるのに、立ち上げの速さは3つともゆっくり

ミントがこの表にいないのは、2本とも温度ごとの出方しか書いていないからです。炭の数も蒸らし時間も出てこないので、この2列には置けません。

フレーバーごとの味が温度でどう動くかはフレーバーの温度帯とスイーツ系の記事にあります。

同じフレーバーでも、温度で出方が変わる。低火力が「正解」なのではなく、狙う味で選ぶものだということです。

ここまで

炭の数で決めるところは、ここまでです。

低・中・高の3段。多めで立ち上げて減らすか、少なめで始めて足すか。フレーバーによって要る熱の総量が違う。

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この先は、動かす幅がずっと小さくなります。置き場所の数ミリや、炭を寝かせるか立てかけるかまで効いてきます。

つまみ② 距離と接地面 ── 個数を変えずに火力を変える

炭の数は粗いつまみです。置くのが2〜3個なのだから、1個は全体の3分の1から半分。足せば上がりすぎ、減らせば下がりすぎる。細かく効かせたいときに動かすのが、位置と接し方です。

  • 縁からはみ出させる(いちばん弱い)。海外の解説には「炭はボウルの縁に置く。私は少し縁からはみ出させる」という書き方があります。葉から遠ざけて、いきなり熱の衝撃を与えないための置き方です。
  • フチに乗せる(標準)。国内の解説も、蒸らしのあいだは炭を外側に置いてボウル全体を外からも温める、としています。 ASLAJ は「内側に置いてしまうとフレーバーに熱が伝わらない」として、空気穴のギリギリに並べると書いています。
  • 中央へ数mm(強い)。チルインの解説は「中心寄りに、ほんの数mm動かすだけでも煙は強くなります」と書いています。立ち上げきったあとの微調整は、これくらいの幅で足ります。
  • 平置き/立て置き(接している面)。平たいフラット炭は、寝かせればアルミに広い面で、立てれば角や辺だけで触れます。触れている面が小さいほど、伝わる熱は減ります。炭の数を変えないまま、1個ぶんより細かく火力を下げられるということです。トータルフーズシステムの解説は、平置き3つで立ち上げ、平置き2つ+立て置き1つへ落とす、と書いています。
位置を動かす直炭の場合ボウルの中心接し方を変える縁からはみ出すいちばん弱い。衝撃を避けるフチに乗せる標準。空気穴のギリギリに中央へ数mm強い。数mmで煙が変わる立て置き(フラット炭)寝かせれば面、立てれば角
位置も接し方も、動いているのはアルミ越しに入る熱(伝導)。数を変えるより細かく動かせる

ここまではアルミに直に炭を置く場合の話です。アルミを張らないロータス型にすると、動かせるつまみが入れ替わります。

ロータス型では、炭はその中に入って、葉の上に浮きます。アルミのどこに置くか、というつまみはここでは使えません。かわりに効くのが、炭どうしの間隔です。CLOUD の技術記事は「炭同士の距離を若干開けてあげること」とし、Kaloud も「熱が均等に回るように、炭は等間隔に置く」と書いています。どちらも理由は同じで、熱を一か所に集めないためです。

直炭とロータス型で、動かせるつまみがどう入れ替わるか。炭の居場所と、置く場所を動かせるか
 直炭ロータス型
炭の居場所アルミの上。葉の真上器の中。葉の上に浮く
置く場所を動かす縁 → フチ → 中央へ数mm使えない。動かせるのは炭どうしの間隔
載せ方が変わると、動かせるつまみそのものが入れ替わる

つまみ③ こもらせるか、逃がすか

風防はかぶせておいて、立ち上げが終わったら外す。HMSの蓋や通気窓なら、閉じておいて開ける。これが基本形です。チルインの解説によれば、ボウル(ハガル)を深く覆う構造やアルミの二重巻き、風防は側面を保温して熱効率を上げます。 drshisha はロータスの蓋について、空気窓を半分開けた状態で立ち上げると書いています。

風防は室内では効きすぎる

海外の専門店の解説は、風防について「熱を閉じ込めるので、本来は正しいセッティングでも一気にきつい側へ振れることがある。屋外では有用だが、室内ではしばしば過熱の原因になる」と書いています。室内で使うなら、立ち上げの数分だけ被せて外す。外し忘れると、そのまま過熱の側へ振れます。

つまみ④ 吸うか、蒸らして待つか ── そしてどう吸うか

蒸らしのあいだ、葉に入っているのは主に伝導です。対流は吸っているあいだしか起きないからです。蒸らしでは、葉が上から順に温まります。待ちすぎれば上面から焼けるのは、そのためです。

吸い出しを始めると、そこに対流が加わります。だから吸い出しは「立ち上がったか確かめる」だけの動作ではなく、下のほうまで熱を引き込む操作でもあります。 ASLAJ が紹介している「1回吸ったら蓋をして、炭をまだ置いていない場所へ動かして、また1吸い」を炭がボウルを1周するまで繰り返すという手順は、吸って対流を通しながら、炭の真下になる場所を1周ぶんずらしていく段取りとして読めます。

吸う強さは、手を伸ばさずに動かせるつまみ

ここまでのつまみは全部、手を伸ばして炭や風防にさわる必要がありました。吸い方だけは、炭にも風防にも触らずに変えられます。そして効き方は炭より細かい。だから立ち上げの最後の詰めは、吸い方で合わせることになります。

DARKSIDE の作り方をまとめた技術記事は、挙げている5つの項目のうちひとつを「温度ムラを防ぐための、最初の吸い出しの強さ」に充てています。そこでの説明はこうです。「気持ちをちょっと強めに吸ってあげることだ。上部に溜まった熱を極力早く下に伝え、温度ムラができるのを防ぐため」。引用の中の「下に伝え」が、対流そのものです。蒸らしのあいだは上から順に温まるので、その偏りをならせるのは吸い方だけ、ということになります。

ただし強ければいいわけではありません。同記事も「強すぎず、弱すぎず、平均よりもちょっと強めの吸い方」とし、判断は水の音ですると書いています。国内の吸い方の解説でも、目安は「ボトルの水がポコポコ鳴るくらい」で共通していて、一定の強さで吸い続けるほうが味がブレにくいとされています。理由はこの節のとおりで、吸う強さが、対流で入る熱を大きく左右するからです。強さが変わるたびに、火力を上げ下げしていることになります。吸い方そのものの基本は吸い方の記事にまとめました。

その前に、急いで吸うと何が起きるのかを先に書きます。効くものが2つあって、どちらも吸った瞬間に動きます。

① 吸うこと自体が、熱の移動を増やす

従来型のシーシャの構造を説明した米国の特許は、吸ったときに何が起きるかをこう書いています。和訳すると「使い手が吸口から息を吸い込むと、外気がアルミの穴から引き込まれ、熱い炭と葉のあいだの対流熱の移動を増やす」。入ってくるのは冷たい外気ですが、炭のそばを通って熱風になってから葉に降ります。強く吸うほど、その量が増えます。

② 炭そのものが、強く燃える

空気が当たれば炭は勢いよく燃えます。炭をおこすときに「息を吹きかけると赤くなるか」で火の通りを確かめるのと同じことが、吸うたびにボウルの上で起きています。つまり吸うという操作は、熱風を送り込むと同時に火力そのものを上げている。効き目は二重です。

そしてその熱が最初に当たるのは、上面です。蒸らしのあいだ葉に入っているのは主に伝導で、炭の真下からアルミ越しに入ります。つまり立ち上げ直後にいちばん熱いのは炭の真下の表面で、そこへ熱風が上乗せされる。急いで強く吸ったときに焦げるのが、いつも表面からなのはこのためです。しかも表面が焼けてしまうと、その下はまだ生のまま残ります。強い火で肉の表面だけ焦げて、中が生のまま。あれと同じです。熱は表面から入って、中へ伝わるのは遅い。だから表面が先に限界を超えます。

伝導も対流も、まず上面に当たるここが焼けるその下は、まだ生のまま急いで強く吸うと、熱風がここに上乗せされる「焦げているのに味が薄い」はこの形
焦げは上から。下は生で残るので、2つは同時に起きる

ここまでを踏まえると、「最初はゆっくり」とだけ覚えているのは取り違えのもとです。吸い方には別々に効く3つの変数があって、焦がすのはそのうちの2つだからです。

  • 速さ。1口をどれだけの勢いで吸うかです。何回吸うかではありません(それは下の間隔)。目安は普段の呼吸より長く吸うこと。同じ量でも、時間をかけたぶん勢いは下がります。
  • 量。大きく深呼吸をするように吸う、と書いている解説が複数あります。目安は「ボトルの水がポコポコ鳴るくらい」。立ち上げの吸い出しでは「3〜5回大きく吸う」という手順も紹介されています。
  • 間隔。3〜4回に1回は休む、という目安が複数の解説で一致しています。休んでいるあいだも、伝導は入り続けます。止まるのは対流の上乗せだけです。

焦がすのは、量が大きいからではありません。速く・強く・連続で吸うからです。 1口はしっかり大きくてよくて、間を空ける。立ち上げの吸い出しが「大きく吸う」と書かれているのは、それで対流をきちんと通すためです。逆に、立ち上がりきる前に間を詰めて吸い続けると、味を出すためではなく焦がすために熱が足されます。

速く、間を詰めて吸う焦がす山が細い=速く短く / 間が詰まる=休まないゆっくり長く吸って、間を空ける焦がさない時間 →山が広い=ゆっくり長く / 間が空く=休む高さは上下で同じ。変えているのは幅と間だけ
1口はしっかり大きくてよい。変えるのは速さと間隔

そのうえで例外があります。さきほどの DARKSIDE のように、熱を通しきらないと生焼けになるフレーバーでは「平均よりちょっと強め」を技術として挙げている解説もあります。また、そのフレーバーの特定の味を出すために、わざと速さを上げて、間隔を詰めて吸うこともあります。

なお、「大きく、でも強くは吸わない」を実際にどう吸うのかは吸い方に章を分けてあります。立ち上げで「肩に力を入れない」「お腹で吸う」と言われるのは、量は大きく、速さは上げないためです。

迷ったときの決め方

  1. 知らないフレーバーなら、低めから始めて足す方向で。薄ければ足せますが、焦がしたら戻せません。取り返しのつくほうから寄せます。
  2. 生焼けの感触が出たら、次の一台で1段上げる。「煙は出るのに味が乗らない・ぼやける」は熱不足の側です。喉に刺さる焦げ味とは別物なので、混同しないこと。
  3. ボウルやHMSが重いなら、熱が伝わりにくい素材なら、時間を足す。炭の数ではなく、蒸らしを伸ばすほうで合わせる。drshisha の手順書は同じ炭3つでも陶器のボウルとシリコンのボウルで待つ長さを分けていて、しかもシリコンのほうは、そのあと炭を1つ減らします。素材が変われば時間も変わる、という実例です。
  4. 直す順番は、吸い方 → 炭の位置 → 風防 → 炭の数。効きの細かい順で、手前ほど取り消しがききます。いきなり炭の数を動かすと、火力が行き過ぎます。
  5. この4つのうち、1回に変えるのは1つだけ。2つ変えると、どちらが効いたのか分からなくなります(トラブルシューティング)。

この5つは、どれも炭の数を答えていません。ボウルも炭もフレーバーも変われば、ちょうどいい数が動くからです。だから次の一台に効くのは数そのものではなく、何個をどこに置いて、何分蒸らして、どうだったかのほうです。そこまで残しておくと、次は同じところから始められます。

次の一歩

なぜそれが効くのか伝導・対流・放射の3経路と、点で吸う/面で吸う書き直し中立ち上がったあとの熱管理炭の数と置き方・アルミの穴・炭の位置替え・立て直し作り手モードで蒸らし時間を残す同じフレーバーで何分が良かったか、次の一台に効きます

立ち上げの3段階と炭の位置・接地面はトータルフーズシステムとASLAJの解説、炭の数と蒸らし時間の実例は drshisha とASLAJ、ロータスの段階分けは六本木 B-Side Shisha Bar 監修記事、「少なめに始めて足す」と縁からはみ出させる置き方は hookah.org、最初の薄い煙と風防の注意は Shisha Superstore、フチと数mmの話はチルインの解説、蒸らしの合図に「ボウルの底がさわって温かい」を入れたのは Zahrah USA と CLOUD の技術記事、熱耐性と生焼けの話は Sohei「Darksideを美味しく作ろう」(2024年)から引用しています。フレーバーごとの話は、複数の解説で一致したものだけを載せました。 Al Fakher バニラは CLOUD とシーシャラゴスのレビュー、Al Fakher ミントはマルキヤシーシャブログとシーシャラゴス、Tangiers は Hookah Vault・Kakas Hookahs・Olla Bowls、 DARKSIDE は上記 Sohei と CLOUD の技術記事です。吸い出しの強さと「上部に溜まった熱を下に伝える」という説明も同じ CLOUD の技術記事、水の音・一定の強さという目安は国内の吸い方解説で共通している内容です(1口の長さは2秒程度〜3〜4秒と幅があります)。「炭は2〜3個が基本」「多く置きすぎると一気に熱が入りすぎ、フレーバーが焦げる」は MIX 5ive SHIBUYA、「立ち上げの数から1つ減らす」とその理由(吸っている時に温度が下がってくる)はトータルフーズシステム、炭を回す手順は荻窪シーシャ yutori 監修記事と ASLAJ、蒸らしと吸い出しの往復は同記事とあやこ「わたし流シーシャの作り方」(2019年)、電子レンジでの蒸らし短縮の実験はダビデ hookah-reviews.com(2015年)です。「0蒸らし」については、勧めている解説も狙いを説明している解説も見つけられませんでした。本文に書いたのは仕組みから言えることだけで、推測の部分はそう明記しています。英語の解説からの引用は本文で和訳しました。数値はいずれも目安で、ボウルやHMS・炭・葉によって変わります。

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